新しく理事会役員になられた方、日頃の疑問や多くの悩みを持たれている方に対し、「管理組合におけるトラブル」関するものを基礎にQ&A形式で掲載いたします。
【管理組合におけるトラブル】
(1)義務違反者
(2)ペット
(3)駐車場
(4)騒音・臭い等
(5)管理費滞納問題
(6)分譲契約をめぐるトラブル
(7)周辺住民とのトラブル
先ずは、5つの質問をご紹介します。(2025年3月18日新規記載:1~5)
1.暴力団等の入居を規約で規制しておきたいのですが、どのようにしたらよいですか?
2.近隣の部屋から煙草の煙が流れ込むのですが我慢しなければならないでしょうか?
3.管理費等滞納で、支払い督促という制度があるようですがどんな手続きでしょうか?
4.信義則違反とは、どのようなことを指すのですか?
5.購入した新築マンションで家族の健康被害が生じています。救済方法ありますか?
Q:暴力団等の入居を規約で規制しておきたいのですが、どのようにしたらよいですか?
A:専有部分は、区分所有権の対象になる部分ですので、規約でその使用方法につき、抽象的かつ無制限
に禁止することはできませんが、標準管理規約は、「専有部分をもっぱら住宅として使用するものと
し、他の用途に供してはならない」としていますので(標準管理規約12条)、暴力団事務所としての
使用は当該規定により禁止されることになります。この点をより明確にするため、暴力団事務所とし
ての使用や、暴力団員を反復して出入りさせる等の行為について禁止する旨の規定を明記することも
考えられるでしょう(標準管理規約12条コメント②)。また、標準管理規約は、暴力団排除条例を
踏まえ、暴力団員への貸与を禁止するための規定例を示すとともに、暴力団員への譲渡については同
様の取り決めを区分所有者間で結ぶといった対応が考えられるとしています。
暴力団組長にマンションを賃貸した場合はその賃貸借契約を解除と引渡しを請求できる
とした事例。(最高裁 昭和62年7月17日、東京高裁 昭和61年11月17日、横浜地裁
昭和61年1月29日)
暴力団事務所としての使用は競売請求の要件を満たす(名古屋地判 昭和62年7月2
7日)とした裁判例があります。
Q: 近隣の部屋から煙草の煙が流れ込むのですが我慢しなければならないでしょうか?
A: 喫煙者による副流煙被害に関しては、それを避けるために、まず、規約等によって、マンションの共用
部分や敷地を全面禁煙区域にするか、あるいは、喫煙スペースを設けて分煙にするかの選択措置を講じ
ることができるでしょうが、この措置は、共用部分の利用・管理に関する事項ですので、勿論、区分
所有者の過半数で決定しなければなりません。
しかし、本設問のように、喫煙者のプライベートスペースから流れ込む副流煙被害につい
ては、その被害範囲が限られた区分所有者のみに限定されますので、(程度や場所にもよ
りますが、)なかなか、法6条に規定される、管理組合の共同の利益に反する行為とは言
いがたく、したがって、管理組合を通してではなく、専ら当事者間での不法行為責任の可
否が問題になるだけであろうかと考えられます。
しかも、このような生活紛争については双方に行使する権利がありますので、当該行為が
社会通念に照らして一般人の受忍限度を超えた場合にのみ、当該行為が違法性をおびるも
のと評価されるのが原則です。したがいまして、まずは、管理組合から一般居住マナーとしての近
隣への迷惑の一例として配慮ある喫煙(たとえ、専有部分で喫煙していても排気口や換気扇を通して外
部へ排出することを完全には防ぐことはできませんので、相互に受忍せざるを得ない問題であるこ
と)を書込んだ掲示を出してもらい、喫煙者にはそれに従った喫煙を丁寧にお願いするのが最も賢明
な方法かと思われます。
Q: 管理費等滞納で、支払い督促という制度があるようですがどんな手続きでしょうか?
A: 支払督促制度は、管理組合等の債権者が管理費等の滞納などの支払請求を簡易裁判所書記官に申し
立てることにより、簡易裁判所書記官が審尋をへることなく管理費等滞納者(債務者)に支払を命
じる制度です。(民事訴訟法第382条~402条)
この管理組合が支払督促を行い、管理費等滞納者の督促異議の申立てがなければ、仮執行宣言の申
立てをすることができます。この支払督促にも督促異議の申立てを行わなければこの支払督促は確定
し、確定判決と同様の効力を有することになり、強制執行の手続をとることができるようになりま
す。しかし、債務者から異議申し立てがあると通常の裁判に移行します。
Q:信義則違反とは、どのようなことを指すのですか?
A:契約関係等の特定な関係にある当事者は、その履行にむけて信義に則して誠実な行動をとるべきであるとする一般的な規範です。
信義誠実の原則は、権利濫用の禁止、両性の本質的平等とならんで概括的な法解釈基準とされ、形式的な法適用に対して妥当な結果を図るための修正機能をもちます。また、相互に特別な信頼・期待関係が生じる場面において求められるものであり、未だ契約が締結されていない準備段階においても、また例えば契約内容の守秘義務のように、契約が無事履行完了し後においても働きます。また、当該契約内容にとどまらず、附随義務についても生じます。
Q:購入した新築マンションで家族の健康被害が生じています。救済方法ありますか?
A: 一定の健康が保証される資材等を使用したマンションが売買された場合、契約不適合責任として修補請求や代金減額請求、損害賠償請求等をすることが考えられます。また、健康被害等に関しては別途債務不履行として損害賠償を請求することも可能でしょう。
売買契約の際に買主が購入物件に関して特に健康面への特別な配慮等の有無や程度を確認し、売主がその安全性を保証していたにもかかわらず被害が生じた場合には、契約不適合と評価され、買主は売主に対し修補請求をすることができ、相当の期間を定めて補修を催告したにもかかわらず補修がなされないときは代金の減額を請求することが考えられます。また、身体的被害については、修補や代金減額では補償されない損害なので、売主に帰責事由があることを前提に、損害賠償を請求することも可能でしょう。
なお、マンションは人が居住する空間であることから、購入した新築マンションが一般的に居住者の健康に影響が生じるような状況であった場合には、上記のような特別な契約内容となっていなくても、契約不適合責任の追及を検討することが可能であると考えられます。さらに、社会通念に照らして環境被害が発生することを認識し、あるいは認識できた状況で敢えて売却している場合には、不法行為責任を問うこともあり得るでしょう。
【判例】
環境物質対策基準を備えた旨をセールスポイントにした分譲マンシマンションにおいて、その基準を満たさないことが隠れたる瑕疵にあたるとして契約解除及び損害賠償を認めた例(東京地判平成17年12月5日)があります。